最近思うこと

 一昨日午後6時半より、理窓会(東京理科大学OB会沖縄支部)があり、講話の依頼を受けて私が大先輩方の前でお話をすることになりました。講話のテ−マは「私の設計姿勢と作品紹介」。今日は最後の締めくくりとしてお話した「最近思うこと」を載せたいと思います。
 今まで色々な住宅を設計してきましたが、どの作品も「同じ形」もなければ「同じデザイン」もありません。当然といえば当然なんですが。どれも敷地も違えば、家主さんの思い、生活スタイル、事情(予算等)も違いますし、それに関わる施工業者も違う。まったく同じ条件がありませんので、毎回違った対処(手法)が求められることになり、そこに新鮮さを感じますし、やりがいを感じます。
 建築は「物価の変動に左右される社会的な産物」なので、品質を確保しながらコストを抑える努力を常にしなければいけません。そのためには、「家主さんが一番したいこと」を把握し、「家主さんの多様なライフスタイル」に対応しつつ「家主さんの要望」をできるだけかなえる努力も必要ですが、ムダな事、取るに足りない事を省く作業も必要になります。「最初のコンセプト」「一番大事な家のイメ−ジ」がなくならないようにするのが私共設計者の使命だと思います。
 また、建築は「環境を形成している社会的産物」ということも忘れてはいけないと思います。私も含めて家主さんにもその意識をもたせることが、「良い環境」「良い沖縄」を形成していくものだと思っています。私の設計事務所のキャッチフレ−ズに「風土に合った」という文言を使っていますが、「風土に合った」という意味は、そういう環境に馴染めるような良い環境を形成できるように、広い目で建築を構築しなければならないという考えを含んでいます。そのためにも、「計画から実施図面作成、現場監理の一連の作業」がどうしても必要になります。どちらが欠けても「良い建築」は実現できません。周囲への対処は、現場でよくわかることがあり、設計だけでは足りないように思えるからです。
 最近の事情のことについて言えば、那覇市では土地が不足しているせいか、既存の親の建物を取り壊し二世帯住宅にするといった事例が多くなってきています。昨年も寄宮で1軒、30坪弱の土地に1、2階を親世帯、3、4階は子供世帯というメゾネット型の二世帯住宅を完成させました。「O邸」がそれです。
 また、敷地が狭く、1階に駐車場をとったら、ほとんど庭が残らないところは、屋上庭園を設ける手法をとることも大変有効だとおもいます。二軒はそうしていますし、今建設中の二世帯住宅「T邸」も屋上に菜園を設けて、屋上を有効に利用しています。
 コンクリ−トの老朽化が進んでいるせいか住宅付マンションを建てる際も既存のアパ−トを取り壊して造ったのが「真喜志邸兼共同住宅」です。立替の時期がきているのを感じます。
 補足ですが、先ほどご紹介した「S邸」に関しましては、少し建売メ−カ−について触れてみたいと思います。家主さんに、計画案を作成し何回か変更案の打ち合わせをしている時期に、銀行からの紹介で建売メ−カ−が家主にプランを提出したということを耳にしましたが、変形敷地のせいか家主さんの要求に対応しきれず、1回だけプランを持ってきただけで、後は来なかったというので私の案が採用されました。「家主さんの要望」をどんな条件下でも実現するという私の意気込みが勝利したのだと思います。
 最後になりますが私は、敷地全体が「キャンバス」であって、「すべて意味のあるスペ−ス」でなければならないと思っています。そして良い建築を実現するために(家主さんの要望の実現も含めて)職人さんの意見にも耳を傾けつつ、お客様の大切な財産を扱っているという意識をもって、常にあきらめない、妥協しないという姿勢を貫いていますし、これからも貫いていきます。
 設計を通して色々な立場の人々(家主さんの職業等)と出会いがあり、それぞれの考え方があり刺激になっています。またこれからが楽しみでもあります。ご静聴ありがとうございました。ご関心のある方は私共の会社のホ−ムペ−ジをご覧下さい。ブログに工事現場の進捗状況の画像を載せて、家主さんに発信しています。